苗木畑
茨城県では漆の木を分根で増やしています。
代々その地に適した品種の中から、さらに育ちの良い個体、漆がたくさん取れる個体の根を選び、苗木畑に植えます。
植えられた根から出た苗木は1年間(2年の地方もあります)育てられ、1m程度になったものを植栽します。
植栽のために掘り起こしたとき、次の苗木のための分根も行います。
苗木の植栽
植栽は3月頃、芽が眠っている時期に行います。
漆は水はけのよい地を好みます。
漆の木は漆の採取までおよそ10年かけて育てます。その過程で互いの枝葉が重なり合わないよう、3~4mほど間隔をあけて植えていきます。
苗木から芽が出る
4月頃、少し暖かくなってきますと、植栽した苗木から芽が出てきます。
漆林の手入れ
植えられた苗木が漆の採取に適したする大きさに成長するまで、様々な手入れが行われます。
定期的な下草刈りやツル切り、肥料や農薬の散布、獣害への対策など、その作業は多岐にわたります。
漆の花
6月になると、漆の木は花を咲かせ、青々とした葉が茂ります。花が7分咲きになるころ漆掻きは始まり、10月下旬まで続きます。
漆掻き
漆が掻けるようになるには、10年もの歳月が必要です。
成長した漆の木に「辺(へん)」と呼ばれる傷をつけ、その掻き口から出る漆を採取します。
漆は、傷を保護しようとするリンパ液のようなものなのです。掻き始めてもすぐには採れず、3辺目にようやく採取できるようになります。
漆掻き道具
これらが漆掻きの道具です。
地方によって呼び名が変わりますが、
右から漆の木の表面の皮を削り落とす「皮剥ぎ鎌」、
隣が漆の木に辺をつける「掻き鎌」
まずU字になっている部分で掻き傷をつけ、次にナイフ状の側(アイの刃)でさらに深く傷を付けます。
その隣は、漆の木からにじみ出てくる漆を掻き取る「掻きヘラ」
左は掻きとったウルシを入れる「漆壺」です。
漆の滴
辺(掻き傷)から漆が湧いてきます。
掻きたての漆は白く、甘い香りがします。
一掻きからほんの数滴しか採取できません。
辺跡
漆の採取は、漆の木に大変負担をかけるため、3、4日間隔をあけて辺をつけていきます。一本の木から、無駄なく採取するため何か所にも辺をつけますが、漆の木の生き道を断たないことが大切です。
採取した漆
漆は一本の木から200ccほどしか採取できません。
採取した時期により、透明感や粘度などの品質が異なり下塗り用、仕上げ用など用途に合わせて使い分けます。
ひこばえ
最終的には、それまで掻けなかった高い位置の幹にも辺をつけ、一滴も無駄にしません。その後、伐採します。この方法は「殺し掻き」と呼ばれ、現在の日本ではほとんどがこの方法をとっています。
伐採した株からは「ひこばえ」が芽を出し、漆は世代交代していきます。